2023年7月14日
報告者 土橋 孝之

1 活動期間 (semester)

2022 年 9 月〜2023 年 5 月(実活動期間は後記)

2 活動場所

(1) 名称:ブダペスト商科⼤学 国際経営学部 国際ビジネス外国語科 日本語科

Budapest Business School (Budapest Gazdasgi Egyetem )(略称:BBS またはBGE、以下BBS), University of Applied Sciences Faculty of Interenational Business and Management Department of Languages for International Business

(2) 住所: 1165 Budapest, Diósy lajos u. 22-24 ① 前年と同じ学生寮に入居した。寮は、玄関がオートロックで個室は鍵式。シェアキッチンが各階に1つずつ、洗濯機、乾燥機 が各階に2つずつ設置されている。玄関外にゴミ置き場があり、玄関脇にその鍵がかかっており常時ゴミ捨て可能。個室はワンルームで、中にシャワー室兼トイレ、シンク、電子レンジ、冷凍冷蔵庫、机、ベッドが設置されている。トイレットペーパー・タオル等消耗品は各⾃で⽤意する。個室は3階(日本式4階)だったが、エレベーターがあり特に不便は感じなかった。

② 管理人:2名。Ms. Zsuzsaは常駐で1階に居住。施設のメンテナンス、清掃、ゴミ処理および居住者の管理等全般を担当。Ms. Reginaは週1〜2回賃料cash払い

3 宿舎

(1) 名称:Korona Albérletház

(2) 住所:Budapest, Koronafürt u. 44b, 1165

の対応、居住者との重要書類の受け渡し等に来訪。滞在許可証申請書類のCertificate of Accommodationの取り付けもMs. Reginaが行っていた。

常駐のMs. Zsuzsaはとても親切で、タクシーを呼んでくれたり、室内清掃、寝具カバーの定期的な交換(各⾃で洗濯と聞いていたが)もしてくれた。また、入居してしばらく後、少し広い部屋が空き家賃は変わらないので移らないかと聞いてくれたが、移動が面倒なのと部屋番号も滞在許可証の申請書に記載していたので丁重にお断りした。英語は話せないがGoogle翻訳で意思疎通は可能であり、常時⼤変お世話になった。

(3) アクセスおよび周辺施設

空港からタクシーで30〜40分。宿舎から⼤学までは徒歩5〜10分程度。すぐ近くに中規模スーパー(Lidl)、ベーカリー、テイクアウト可能なレストランが1軒ずつある。(グローサリーストアは在任中に閉店となった。) バスで20分程の所に⼤型のモール(Árkád)がある。宿舎は立地が郊外のためブダペストの中心地からはバス+地下鉄で40~50分と遠いが、反面住宅街のため環境は静かだった。

4 日本語科の概要

(1) 研究室: ⼤学南棟(D 棟)2F 47号室 外国語科研究室の集まる場所にある。(昨年と同じ)

(2) 授業:日本語科の研究室(D Ⅱ47)と教室(E 棟)で行われた。(振り分けはクラスの人数による。)

① 研究室、E棟の教室ともデスクトップPCとプロジェクターが設置されている。

入室の際、教室の鍵(およびE棟ではプロジェクターのリモコン)を各棟入⼝の守衛室でサインして受領し、退出時に守衛室に返却する。 (守衛不在時には扉の外の鍵入れBOXに入れる。)

② 研究室の左部屋にボランティア教師(ICEA派遣の教師、以下同じ)が使えるデスクトップPCと机がある。プリンターも使⽤可能だが、財政的な理由からトナーの補充が確実ではないので、倹約して使⽤している。

コピー⽤紙についても同様で、特に白紙にこだわらない場合は研究室にストックされている使⽤済み廃紙の裏面を使⽤している。

(3) 日本語教員: 佐藤紀子教授、セーカチ・アンナ教授、ホールバート・ダーヴィッド先

生 (ダーヴィッド先生は今期から常勤になった。常勤になって以降の正式なタイトルは未確認。)

(4) 日本語授業の担当(毎週):

① ダーヴィド先生:1年生1コマ、2年生1コマ、3年生2コマ及びオフィスアワー

② 佐藤先生:2年生1コマ

③セーカーチ先生:1年生1コマ

④ ボランティア教師: ( 1)

・前期: 1〜3年生各2コマ( 2)および中級2コマ(合計8コマ)(中級はボランティア教師のみ)。

・後期:1〜3年生各2コマ( 2)および中級3コマ( 3)(合計9コマ)(中級は前期同様ボランティア教師のみ)。

・出席人数(当初):1年生A:10〜12名、1年生B:4〜5名、2年生A:4〜6名、2年生B:4〜6名、3年生A:5名、3年生B:2 名、中級:3名。

幅があるのは3回目の追加授業ということで出席がmustではないため、他のスケジュールと重なると欠席する学生が出るため。また、後期は本来科目(特に経済関係科目)の履修と重なる学生が多く、出席人数は減少した。但し、中級クラスは全員皆勤で、むしろ後期は2〜3名の学生が増え5〜6名となった。

( 1)ボランティア教師の授業の割り振りは、期初にダーヴィッド先生が学生が参加可能な曜日(*)の希望を取って決めるので相当ランダムな時間割になっていた。

(*) Business Schoolということもあり、学生は皆授業以外に仕事を持っているため

スケジュールがタイト。

( 2) ボランティア教師の授業は、3人の先生が行う正規授業(1〜3年生週2コマずつ)の3コマ目として補修的に行うもの。原則テストの作成、採点は3先生が行い、ボランティア教師は個別学生に関する評価のコメントを求められる場合以外ノータッチだった。但し、中級クラスの期末テストのみ佐藤先生から実施および評価を依頼された。

( 3)後期の中級は学生の希望で1コマ増加した。

(5) 日本語授業の内容

① 1〜3年生の授業:各課の会話・文法・文型の導入および中間・期末テストの作成・採点は全て3人の先生が担当するため、ボランティア教師は⾃主作成の復習・練習問題が中心の授業であった。したがって、飽きが来やすいので、各課のスキットで穴埋め問題を作成したり、発話機会を増やすため会話の発音指導を増やす等工夫した。

② 教科書:

・教科書は佐藤先生、セーカーチ先生が作成した独⾃教科書「できる I」「できるI I」を使⽤。(発行元はJFで市販もされている。)会話・文法解説等内容はほぼ全てハンガリー語。それに関する副教材がJFハンガリーのHPに掲載されている。(学生もこのサイトを知っているので、教科書の練習問題、追加の練習問題の解答を皆入手していた。)

なお、1〜3年生とも「できる」を使⽤していたが、3年生の1名がN2受験希望だったため、この学生のみ別クラスとして「上級へのとびら」を使⽤した。

・漢字: 「漢字ノートステップA100、B200、C250,D250(JFブダペスト日本文化センター)」の冊子を使⽤。今期は1年生はA100、2年生、3年生はB200を使⽤した。

・ひらがな・カタカナ:(1年生⽤)「平仮名・片仮名練習帳(ハンガリー日本語教師会)」の冊子を使⽤した。

③ 中級の授業: 中級クラスはボランティア教師だけが担当するので、テキストの選定、授業内容等全て一任された。今期は素材として、NHK on Demandの中から (初〜)中級レベルのビジネス日本語のストリーミング放送を取り上げてみた。全ての課がビジネス日本語のロープレのスキットで構成されているため、飽きが来にくく学生にも好評だった。各期の終了時にはロープレのテストも行った。

④ 授業内容の共有:3先生間は都度メールで実施した授業内容を共有し、ボランティア教師にも写しを送付してくれていたので、それにしたがって次の授業の準備を行うことができた。なお、こちらからの授業報告は原則として求められなかった。

(6) 学生

① 日本文化(特にマンガ)が好きな学生がエントリーしているので、日本語に対する関心が高く全体に授業への取り組み姿勢は真面目で熱心だった。 教師としても⼤いにやりがいを感じる場面が多かった。

② 留学:23年4月から神戸⼤学へ1名留学しており、9月に神戸⼤学へさらに1名、城西⼤学へ2名の留学が既に決定している。年々留学経験者が増えているので、他の在学生においても留学への意欲が強く感じられる。

(7) 城西⼤学・ブダペスト商科⼤学ハンガリー短期研修プログラム

19年まで毎年実施されていた同研修プログラムは20〜22年はコロナのため中断していたが、今年再開された。今年の日程は2/12〜2/22。

② 参加者:城西⼤学から学生10名と付き添いのPh. D、事務局が来洪。BBS側も同数の学生および日本語教員が参加。

③ 内容:両国の事情、両⼤学の紹介、初等教育現場見学、日本語授業見学、バラトン湖への研修旅行、市内見学 、最終日両校学生による研究発表(総論テーマ「持続可能な経済発展」、各論テーマ「(両国における)ゴミ収集の現状」「(両国における)水資源の活⽤)」)

学生同士すぐに打ち解けて⾃主的な交流も盛んとなり終始良好な関係で推移した。

研究発表もレベルの高い内容だった。

④ ボランティア教師は、各行事実施の手助けおよびBBS学生の研究発表の論文の

添削、スピーチ指導等を行った。

5 各学期の行事、活動

(1) 秋学期(2022年9月5日(月)〜12月8日(木))BBSは金曜日は授業なし(閉館)。

・9月22日(木)am ブダペスト到着( )。国際部Nóra氏が寮で迎えてくれた。管理室で管理人二人(ref. 後記)と顔合わせ。その後Árkádモールへ送ってもらいSIMカード、当面の日⽤品の買い物を済ませた。

( )VISAが下りるのを待って渡航を延ばしていたが、結局間に合わず、No VISA

(観光VISA)で入国することとなった。

(・9月25日(日)〜10月2日(日)到着直後に新型コロナに感染発症、保険会社に

連絡し病院の手配と同行を依頼。その後⾃宅⾃主隔離。)

・10月3日(月)回復したので出勤。ダーヴィド先生と顔合わせ。1年生クラス1コマの授業見学をした後、研究室でPC他IT機器の取扱方法の説明を受けた。3限目からダーヴィド先生が事前に作成した時間割にしたがって授業を開始した。

・10月5日(水)佐藤先生、セーカーチ先生と顔合わせ。(後日ダーヴィド先生の紹

介でヒダシ先生と学科長にも挨拶)

・10月11日(火)国際部事務局Nóra氏の事務室で移民局訪問(在留許可証取得)の

打合せ

Nóra氏によれば、東京で行ったVISA申請が移民局のWeb上で確認できず、その後

の経緯も不明、また予約システムもダウンしているとのことで、ひとまず予約なし

で行ってみることになった。

・10月17日(月)移民局訪問(Nóra氏:最初の方だけ同行)。午後持参書類の確認の

み(提出なし)で申請手続終了。所要時間:到着から3〜4時間(待ち時間がほとん

ど)。1か月後に許可証を交付するとのこと。

・10月24日(月)〜11月1日(火)秋休み(閉館)

※但し、中級クラスは学生の希望で授業を継続。

・11月18日(金)移民局で在留許可証受領(念の為学生に同行を依頼)。今回も2時間超待たされたが無事許可証を取得できた。(在留許可証には、東京の⼤使館で撮った写真が貼られていたので、東京でのVISA申請はWebでは確認できなかったものの有効だったことが判明。)

・11月12日(土)「ハンガリー日本語教育シンポジウム」(於、JFブダペスト日本文化センター):

佐藤先生の誘いで参加した。BBSの3先生は実行委員を受任している。ブダペスト在住の日本語教師を中心に全部で50〜60名が参加した。元東京外⼤教授の善如寺俊幸先生の漢字に関する講演のほか各先生方との交流会もあり⼤変有意義なイベントであった。

・11月30日(水)日本語動画コンテスト開催(JFブダペスト主催)

BBSからは担当する中級クラスの学生1名がエントリーした。佐藤先生からナレーションの発音指導の依頼を受け特訓。同学生は最優秀賞を受賞した。

・12月8日(木)前期授業終了

・12月15日(金)日本語科クリスマスパーティー(於、研究室およびE棟教室):

アトラクションとして学生の書道教室の運営を依頼された。当日の道具の準備のほか、PPで作成した筆の持ち方、書き方および「希望」「平和」「友達」3熟字の手本動画を上映し、先生方からとてもよかったと評価をいただいた。道具は研究室に10セット余りストックがあったが、出席希望者が多く結局代わる代わる書くこととなった。それでも、皆十分楽しめたようで大いに盛り上がった。

・12月25日(日)〜 23年1月29日(日)一時帰国

(2) 春学期(2023年2月6日(月)〜5月11日(木))BBSは金曜日は授業なし(閉館)

・2月6日(月)後期授業開始(ボランティア教師の授業は2月8日(水)から)

・2月12日(日)~2月22日(火)城西大学・ブダペスト商科大学短期研修プログラム

ref. 上記4(7)

・3月4日(土)ハンガリー日本語教師会主催第28回日本語スピーチコンテスト(3年ぶり

開催):

ⅰ) 「中級の部」に、担当する中級クラスの学生1名がエントリーした。佐藤先生からスピーチの指導を依頼され、数回に亘りかなり精緻な指導を行った。同学生は当該部門の最優秀賞を受賞した。

※11月の動画コンテスト同様、当方は学生の背中を少し押して元々の実力を顕在化させただけに過ぎなかったが、それでも直接指導した者としては大変嬉しい結果になった。先生方にも感謝された。

ⅱ) また、「初級の部」の審査員1名が直前でキャンセルになったため、当コンテストの実行委員長を受任されているダーヴィド先生の依頼で予選のWeb審査を代行した。

・3月27日(月)リスト・フィレンツェ音楽大学(通称:リスト音楽院)日本人学生コンサート

佐藤先生、セーカーチ先生、ダーヴィド先生と参加した(佐藤先生にチケットを手配していただいた)。20周年ということで大使の挨拶の後満員盛況のうちに開催。学生とはいえ、例えばバイオリニストは既にオペラ座の第一バイオリンの一員を務めるほどの実力者であり、その他の学生も皆極めてレベルが高く、真に感動的で余韻の残る良いコンサートだった。

・3月15日(水) 革命記念日(休日)

・3月20日(月) ~ 3月25日(土) 授業休み

・4月7日(金) ~ 4月10日(月) イースター(休日)

・5月1日(月)メーデー(休日)

・5月11日(木)後期授業終了、送別会(於、研究室)

昼休みに佐藤先生の声掛けで送別会を開いてくれた。

出席者:佐藤先生、セーカーチ先生、ヒダシ先生(ダーヴィド先生は病欠)ほか学生10数名。お菓子、⾃作ケーキ等を持ち寄り温かく送ってくれた。

・5月23日(火)寮退出(管理人に鍵を返却するのみで退出時の管理人の室内点検はなかった。)

・その後帰国

6 その他

個人的な感想で誠に恐縮ながら、ブダペストは9年前旅行中に思いがけず急病になり、ICUを含め1か月間闘病しまさに救命してもらった経緯があり、その意味で⼤変お世話になった生涯忘れ得ぬ街です。いつか何かお役に立てないかと思っていましたが、辻代表から今回のボランティアのお話をいただき、微力ながらこの街で活動し先日無事任期を終えることができました。

在任9か月間で何ができたのか⼤変忸怩たるものがありますが、豊富な経験と高い識見をお持ちの先生方、フレンドリーな学生たちや、やさしい街の人々に助けられながらも、もし多少なりともブダペストの街や人々のお役に立てたのであればこの上なく幸せに感じます。

最後に、今回の派遣の労をとっていただいた辻代表に心から感謝申し上げます。

以上