10月報告(H.K)
・派遣期間 2023年10月~7月(授業は6月まで)
・派遣人数 4(日本語教師2・書道1・ヨガ1)
・活動場所 ヴロツワフ市内「波」財団 住所 Pszelot 7 Wroclaw
・住居 活動場所と同じ(上記日本語2名・書道1名が生活)
・週間スケジュール 別表参照
10/8(日)昼過ぎヴロツワフ中央駅に到着しました。ワルシャワからは4時間40分に及ぶ移動でした。
駅まで「波」代表のMさんGさんご夫妻が車で迎えに来てくださいました。私がお二人に会うのは二度目です。前年(2022年)の夏、まず挨拶をしようと思い、ポズナニから来たときが初対面でした。明るく気さくな人柄のお二人です。
今回私は夫婦二人で参加しました。私は日本語を、妻は書道を担当します。
〈授業〉
授業は6時間(アニメクラブクラス・初級子どもクラス・初級大人クラス・初心者大人クラス・オンライン初級クラス・コミュニケーションクラス)。授業時間等は週間スケジュールを参照。
テキストは『げんき』と『初級日本語(東京外語大 jplang)』を使用。10/10(火)に前任のTご夫妻にお会いし、引き継ぎを受け、クラスの様子などをお聞きする。
授業は次のようにスタートした
・アニメクラス :「げんき」13課から
・初級こどもクラス:『げんき』1課(ひらがなの確認)から
・初級大人クラス :『初級日本語』10課から
・初心者大人クラス:『げんき』1課から
・オンライン初級クラス:『げんき』 開始2回で終了
・コミュニケーションクラス:その都度話題を見つけてフリートーキングをする
〈活動場所と住居〉
築100年を越える「波」財団の活動拠点は市内の南(トラム12分・徒歩12分)に位置している。館内にはメインホール・クラスルーム・ソファールーム・ダイニングキッチン・バスルーム(2箇所)に加えて、二つ(中・小)のベッドルームがある。一つのベッドルームを私たち夫婦が、もう一つをYさんが使用している。私にとってシェアハウス形式での生活は初めての経験となる。
「波」での生活において何より大きな特徴は活動拠点と住居が同じであることで、ベッドルーム以外の共用スペースの使い方などでは勝手を得ないことが多い。公私の使い分けをした上で、どれほどプライバシーを確保できるのかかわからないまま一か月になる。使い方などでわからないことが出てきたときには遠慮することなく確認することが必要だと感じている。
建物の構造・使用状況はやや複雑で正確には把握できていない。3階建て(日本での言い方)の建物の、1・2階を「波」が利用している。各種の活動と私たちの生活は2階で、1階はMさんGさんが事務所として利用している。
3階は「波」とは別の方が使用している。また、建物内にはもう一つの入り口があり、別の方々がお住いのようだ。
〈「波」の活動〉
「波」では多岐にわたる活動が展開されている。剣道(名称:龍心会)・アニメ・将棋・シニアグループ(名称:生きがい)・阿波踊り(名称:波連)・コーラス(名称:歌いましょう)・居合道(名称:錬心会)のグループがある。日本における市民講座とか公民館活動と通うものがある。その熱心さに驚かされてしまう。活動の概要は次のようになる。
剣道・居合道:市内の体育館で、週4回練習していると伺った。先日は日本から指導員を招き、一週間ほどの特別練習期間があった。また活動10周年の記念パーティーが「波」で開催された。 アニメクラブ:日本のアニメ作品を鑑賞し、意見交換をしている。アニメに精通しているマニアぞろいで、時に盛り上がり笑い声がホールにあふれる。
シニアグループ:ストレッチ体操をしたり、日本文化についいて研修したり、にぎやかに食事作りをしたりしている。エネルギッシュなシニア女性のグループ。
ヨガ:日本人ボランティア・インストラクターの指導のもと、時に何度の高いポーズにも挑戦する。瞑想時にはホールにお香が漂い、幻想的な雰囲気に包まれる。
阿波踊り:笛・太鼓・鉦の鳴り響く中、「波・連」のメンバーが熱心に練習に取り組んでいる。篠笛は市内在住の日本人が担当している。
コーラス:日本の歌を中心にポーランド人指導者のもと練習が行われている。館内には明るい歌声が響きわたる。
また、10月下旬には市内の美術館小ホールで剣道・居合道・阿波踊りのパフォーマンスを披露したり、代表家族の次女Aさんによる着物全般に関するプレゼンテーションが行われた。
もしかしたら「波」は日本より日本的な空間かもしれない。とにかくここには日本があふれている。
「波」の活動を以下のサイトで閲覧ください。https://www.fundacja-nami.pl
10月最終日曜日には夏時間が終わり、秋の深まりを感じる季節を迎えています。夕暮れの早さには時に冬の近さを感じることさえあります。
知人から「もう慣れましたか?」とか「すっかり慣れた頃ではないでしょうか?」とのメールを受け取ったりするが心中はやや複雑で、その質問には単純に答えられない難しさを感じています。独特な形態での生活に慣れるまでにもう少し時間が必要です。
熱心に活動を展開している「波」のみなさんの姿を見ながら、その生活スタイルが私たち日本人のそれとは明らかに違うと感じています。一日の時間の使い方の違いについて、趣味を楽しむことの意味について今後いろいろと考えさせられそうな気がしています。
異文化体験をしてみたいとの思いで開始した活動で、これから起こであろう自分自身の変化に期待している。
〈スケジュール表〉

12月報告(書道 I.K)
対象
①大人 ・・・10/17, 10/31, 11/14, 11/28(4回)
②こども ・・・10/19, 11/2, 11/16, 11/30(4回)
③ワークショップ ・・・11/18
④生きがい(シニア)クラブ・・・11/28
実施日
①大人(10代~、および大人) ・・・・隔週 火曜日 17:00~18:30(90分)2人
②子ども(10~14歳) ・・・・隔週 木曜日 16:30~17:30(60分)2人
③ワークショップ ・・・・月1回 土曜日 17:30~20:00(150分)2人
④生きがい(シニア)クラブ ・・・・活動日(火曜日)11:30~13:30(120分)6人
内容 ー漢字だけに限定ー
☆「とめ」「はね」「はらい」 および「一」「十」「川」「人」の練習・・・上記①~④共通
☆上記①➁では、「 土・山・天・石・王・人・木・冬・月・友・羊」の中から、2つ選んで練習
☆ワークショップでは 「月」と「川」を、シニアクラブでは「人生」を練習
最終時間には、完成した作品1枚を色画用紙に貼り、持ち帰ってもらった。
☆上記①➁では、半紙のほかにポストカード(1枚に1文字)にも清書した。ポストカードは和風色紙で少し装飾し、 色画用紙に貼った半紙と一緒に持ち帰ってもらった。
その他
☆滞在期間が10~12月であったので、「5回」実施予定であったが、「4回」となった。
☆書道授業はオプションという位置づけであった。したがって実施予定も日本語授業が決定してから知らされた。
☆実施会場の広さの関係で参加者は「最大5名」でお願いした。
☆「書道」とはいえ内容的には「習字」、正しい書き順と美しい文字の書き方、正しく整った文字を書くことをめざした。そして、何よりも楽しいと感じてもらうことを大切にした。
12月報告(H.K)
12/1(金)に初雪が降り、10日以上寒い日が続きました。積雪は10㎝ほどでしたから交通機関への影響などほとんどありませんでしたが、この雪が本格的な冬の到来となりました。新潟出身の私たちでさえその到来の早さに多少戸惑いました。けれど、10日後には寒波も去り、雪はすべて消えました。生徒の中には、これでホワイトクリスマスは期待できないとか、もう今年の冬は終わったんだとか言い出す生徒もいました。12月になると街は一気にクリスマスモードが高まります。活気があふれ、クリスマスの飾り付けが華やかさを演出します。みなさんのクリスマスを待ち望む気持ちがよく伝わってきました。ヴロツワフのクリスマスマーケットは規模も大きく、とてもカラフルで華やかさが感じられます。ポーランドはもとよりヨーロッパでも人気が高く、マーケットは連日多くの人で賑わっていました。
〈授業〉 授業は12/21(木)まで行いました。年内最後の授業ではお茶とお菓子で談話やレクレーションの時間がもてました。授業の進捗状況は次のとおりです。
・アニメクラス:「げんき」14課終了。「数え方 6通り」「年中行事 節句」
・初級こどもクラス:ひらがな(まとめ・確認)、カタカナ学習、指示語の練習(こそあど)、時間の言い方練習
・初級大人クラス:『初級日本語』11課終了。テキストとは別に「自己紹介」作成
・初心者大人クラス:『げんき』3課始める。動詞の基本(基本動詞:3つのform、3つのgroup)
・コミュニケーションクラス:談話内容:クラクフで行われたアニメイベントでの様子、アニメクラブの歴史・活動内容・年間予定など
〈各グループの活動〉 12月はパーティーが数回が行われました。 12/ 8(金) 龍心会 月例会。カトヴィツェで行われた剣道大会のビデオを見ながら振り返りを行う。 12/16(土) 「波」のクリスマスパーティー。参加グループ:龍心会、錬心会、アニメ、将棋、阿波踊り、コーラスなど多数。 12/20(水) アニメクラブ。年内最後の活動(クリスマスパーティーも兼ねていた) 12/31(日) ニューイヤーパーティー。1/1の4:00まで。 私たちはクリスマスパーティーにだけ参加した。これらパーティーの中には予定を知らされてないものがあった。事前に知らせてもらったものも細かな時間等については当日になってもわからなかった。これがポーランドスタイルなんだろうか。このスタイルに適応し慣れ、楽しむことができるのだろうかとふと考えた。パーティーとはいえ、アルコールは控えめで度を超すことはない。日本の飲み会の騒々しさより穏やかで紳士的ではないだろうか。ずっとソフトドリンクを飲んでいる人も多い。最後は自分の予定(都合)で三々五々帰宅していく。 終了後は会場の復元、食器洗い、ゴミの処理などをする。代表のMさん・Gさんが中心だが私たちボランティアも協力する。みなさんが帰った後は突然静けさが戻る。 クリスマスパーティーの前に龍心会メンバーが催し物の練習を金曜夜・土曜午後に行った。とにかく熱心な練習だった。 シニアグループは週2回(火曜日と金曜日)活動している。12月から金曜日が木曜日に変更になった。木曜日のストレッチ体操は龍心会・指導者Mさんが先導する。私も参加するようになった。 総踊りグループが土曜午前に練習を行った。月に一度ほど来館するようだ。 3ヶ月の間に各グループの顔ぶれもかなりわかるようになってきた。中には複数のグループに所属し、活動している方もいる。
〈生活のその後〉 設備全体が老朽化しているからだろう、暖房の効きが弱いことがあった。部屋ごとに温度差があるが、ダイニングルームが20℃にならないこともあった。そんなときは移動式のパネルヒーターを追加で使用した。上旬の寒波が収まってからは暖房は順調だが、シャワーがぬるくて難渋したこともあった。トイレの流れが不具合だったことも、洗濯機への配線が途絶え使えなくなることもあった。いつまた不具合が起こるのかとの不安がある。12/21(木)の夜には1時間程度の断水があった。 10月の報告でも述べたように、ここでの生活ではプライバシーの確保が大きな課題である。活動場所と住まいが同じであることがその理由である。大勢の方が活発に活動することで、そこに居住している日本人ボランティアの空間が制限されてしまう。大勢の方が活動しているときは、ダイニングムールに居続けるのも気が引けて、自室に引き上げることとなる。もちろん、キッチンやトイレはいつも通り使用可能ではあるが使用に際してどうしても気兼ねをしてしまう。 この建物とは別の所に独立した住まいがあればと考える。「波」で日本人ボランティアがこれから継続的に活動していくためには必要なことだと思う。
2月報告
3月になりました。朝から晴れ上がったときには春の訪れを感じます。何より日照時間が大幅に伸びました。冬至の頃より日照時間は約3時間伸びました。授業が始まる時間帯にも外が明るいというだけでどこか安心できるものを感じます。今年の冬は暖冬のまま終わってしまう(くれる)のだろうかと考えていたら、「まもなく寒波が来る」とのこと。天気に関しては心配しすぎても、楽観しすぎてもいけないのは長い登山経験でわかっているつもりでも、ちょうどいいあたりというのは案外難しいものだと感じます。
「授業報告」
・アニメクラス:「げんき」16課「~てあげる/てくれる/てもらう」「~いただけませんか 6パターン」「~時(とき)」
・初級こどもクラス:「はなのみち」音読練習(『光村図書小学1年』)、形容詞・絵カード作成、折り紙、ぬり絵
・初級大人クラス:『初級日本語』12課(音読・聴解・助詞)、助詞の学習(N5.N4問題集)
・初心者大人クラス1:『げんき』4課(location word・動詞のpast tense)
・初心者大人クラス2:1/11スタート 『げんき』1課、ひらがな練習(絵カード)、カタカナ練習
・コミュニケーションクラス:談話内容:アニメクラブの歴史・活動内容、アニメ・ゲームに関連する思い出、農業 従事者の大規模デモに関連して、社会のデジタル化に関連して、国際交流基金「まんがとアニメの日本語」紹介など。
こどもクラスでのこと:このクラスは小3~小7の男女7名で構成されています。2/14の授業中、一番年下(小3)の男子生徒に対して、小6女子と小5男子がことばによる加害行為(いじめ・からかい)を行いました。運営責任者のGさんに被害生徒の保護者からメールがありました。詳しい内容を聞かされていませんが、男子生徒は迎えに来た車の中で泣いていたそうです。この生徒はいつも明るく、とても素直な生徒です。大変申し訳ないことになってしまったと反省しています。実は最近授業中ににぎやかになりすぎることがあるなと感じていた矢先のできごとでした。私にはポーランド語での攻撃を理解することができませんが、それでも険悪な空気は読み取ることはできたはずだと振り返ります。2/21の授業の初めに「授業中のルール」を話しました。このことはこれからも何度でも繰り返していくつもりです。その日男子生徒はいつもどおりにこにこしていたことがせめてもの救いに感じましたが、今後は一層注意深く授業をしていかなければならないことは言うまでもありません。
アニメクラブクラス・コミュニケーションクラスの生徒のこと:アニメクラブの男性1名と女性1名、そしてコミュニケーションクラスの男性1名が日本へ向け出発しました。東京で開催されるアニメイベントにも行くそうです。初めて日本に行く期待の大きさが表情からも感じ取れました。ちょうど東京は桜のシーズンを迎えているでしょう。彼らは花見という日本文化に触れることになりますが、彼らの目にどんなふうに映るのでしょうか。彼らから旅行プランを伺い、私たち日本人の旅行スタイル、プランの立て方との違いに驚かれされました。旅行期間は長く(仕事の休暇は容易に取れるようです)、スケジュールには余裕がいっぱいで、まだまだ決めていないところが多いのです。多くの日本人はガイドブックやインターネットのサイト・ブログ等から「ここだけは・・」を中心にプランを立てることが多いのではないでしょうか。それに対して彼らは「自分はここへ・・」を中心にプランを立てているようです。頼りにするもの、よりどころが大きく異なることを興味深く感じています。帰国後のみやげ話が楽しみです。
〈会館の利用状況〉 各グループは今年も意欲的・継続的に活動しています。その定期的な活動に加え、いくつかのイベントが行われました。表「会館の利用状況」の中の「子どものための・・・」「ワークショップ 書道・きもの」「韓国新年会」はそれに該当します。なお剣道龍心会は週4回、会館近くにある高校の体育館で練習しています。
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〈その他〉
細かく数えてはいませんが、2月のどこかで中間点を折り返したはずです。異文化に触れる日が積み重なっていきます。共通点を見つけて安堵したり、反面違いに直面して戸惑ったり・・・。社会のシステムがあれこれ異なります。言語・宗教の壁があり、複雑な歴史的背景をなかかな理解できずにいます。人々の行動様式と思考の仕方に違いを感じながら、私たちは圧倒的少数として生活しています。適応・順応したいと思いながらも、変えることのできないアイデンティティがあります。ふとポーランド社会での自分の現状を考えながら、ベリーの「文化変容モデル」に自分を当てはめてみます。今、自分がどの程度適応しているのか、自分がどの程度受け入れられているのかと・・・。「多文化」とアイデンティティの保持は共存するのだろうか、孤立を避けたいばかりに「同化」という妥協を繰り返していないだろうかと・・・。旅行などの際に感じる高揚感とは違う冷静さを持ちながら日々を見つめてみたいと思うと、心ならずも批判的なことにまで、非難じみた不本意なことにまで思いが及んでいきます。 先日来、市内図書館で絵本を借りてきて読んでいます。5歳~7歳向けの絵本が私にはちょうどいいポーランド語レベルであることにおかしさを感じながら。2月に読んだヘイエルダールの『コン・ティキ号航海記』には懐かしさを感じました。今月は古代エジプトの書記官の生涯を紹介した『小さな書記官と偉大なピラミッド』を読んでいます。作者は遺跡から見つかった生活品を手がかりに古代人の暮らしに思いをはせます。そこには労働があり、楽しみや安らぎがあり、不安や恐怖があります。作者は「人々は案外似ている」との思いに到り、その思いを基調に作品を描いています。まもなくイースターがやってきます。
