2026年5月13日

矢崎 雅俊

【授業日程】

 1学年はⅠ学期(授業期間;2025年8月12日~11月21日)とⅡ学期(同:2026年1月5日~4月24日)に分かれる。受講は1年単位ではなく、約5カ月間の一つの学期単位でコースは完結する。

日本語コースは、初学者を対象としたレベル1(L01)のクラスと、レベル1を履修した生徒を対象としたレベル2(L02)の2クラスがある。いずれも選択科目の一つ。両クラスとも週3コマ(1コマ55分)の授業をし、1学期あたり31~32コマの授業数となった。

各学期、それぞれ定められた期間に中間試験と期末試験を実施する。その前後のディヴァリやホーリーに合わせるかたちで1週間程度の休みがある。病気などで試験が受けられなかった生徒に対する再試験は行うが、成績が悪かった生徒に再挑戦させる追試のような仕組みはない。

【授業内容】

 L01の生徒数はⅠ・Ⅱ学期とも約90人。L02はⅠ学期は約50人、Ⅱ学期は約30人だった。

いずれのクラスでも「いろどり生活の日本語/入門A1」を使用。今回Ⅱ学期を終えた時点で、L01は教科書の1ページ目から第8課まで進んだ。L02はⅠ学期からの続きで第7課から第16課の途中まで進んだ。同じ教科書を使うなら、来期のL02は第9課からとなる。

 日本への渡航経験があったりJLPT受験をめざしたりする生徒がいる一方、アニメなどで日本に興味を持った段階の初心者が混在する。大学側には、「本来は1クラス15人かせいぜい20人規模が望ましい」と何度か伝えたが、結局は上記の生徒数だった。特にL01は、授業に出てくる生徒が半分に満たない場合でも、なかなか一人ひとりに目を配った会話練習などはできなかった。

 このため、筆記で行う中間・期末試験のほかに、教師と1対1の会話テストの機会を設けた。L01は期末試験前に1回、L02 は中間・期末試験の前に各1回、会話力を測った。「自己紹介」「私の部屋」「私の趣味」といったテーマを事前に提示し、いくつかの文で自由に話させた後、教科書の主要な文型を使って一問一答をし、リスニング力・スピーキング内容・発音・語彙力・文法の正しさをみた。

 会話テストは通常の授業とは別に期間を設け、30分で最大6人の生徒を試験する想定で時間枠を無料ソフト「SignUpGenius」で作り、都合のいい枠を生徒に選ばせた。

 前任者は、漢字学習を割愛し、文字学習そのものを重視していなかったようで、当初はL02のクラスでもひらがなやカタカナを読み書きできない生徒が多かった。本格的に日本語を学ぶ必要がなければローマ字読みだけで教えることもできるのだろうが、私自身がそのやり方を経験したことがなく、教科書でも早い段階からローマ字読みの記載がなくなるので、通常通りひらがな・カタカナの学習から入り、漢字学習も教科書に沿って進めた。

 L01では、最初の数週間の授業でひらがな・カタカナを書いて来させる宿題を課し、添削をして練習させた。ひらがな・カタカナに関する小テストも実施した。人数が多く採点が大変なので「GoogleForm」でテストを作成したが、ネット環境次第で全員同時に実施できるかどうか不安定なところがあり、綱渡りだった。

 誰にとっても文字学習は難物で、せっかく日本語に興味を持って受講したのに、いきなりひらがな・カタカナで苦労する生徒は多い。そのせいか当初、大学側からは「あまり書かせることはしないでほしい」と注文をつけられた。しかし一方で、文法はだめでも漢字には興味を持って練習し、試験で点数を稼ぐ生徒もいた。

【生徒たちと成績・試験】

 授業は、基本的に英語で行った。ただし、生徒が使う独特のインド英語がすぐには理解できないこともしばしばだった。地元では大学名を「××××IT」と言うのだが、それが「トリプルIT(Iが3つとT)」だとわかるまで半年かかった。

 生徒たちは、とにかくすさまじく成績にこだわる。試験が近づくと、試験内容を示す要綱(シラバス)、成績判定の際の各試験などの配点を知りたがるので、こうした情報はなるべく早めに知らせるようにした。答案用紙を返すと、「どうしてこの答えではだめなのか」「正解に近いのだからもう1点ほしい」などと食い下がってくる。成績判定に対しても、その根拠を明らかにするよう求めてくる生徒も一定数いて、特に不合格とした生徒には丁寧に回答した。

 成績のレベルと点数は10点満点で以下の通り。

O = 10、A+ = 10、A = 9.0、B+ = 8.0、B = 7.0、C+ = 6.0、C = 5.0、D+ = 4.0、D = 3.0、F = 2

 Fは不合格で、必要があれば再履修しなければならない。A+の中でも特に秀でた生徒に対し、生徒数の2%以内の人数で「O」をつけてよい。レベルごとの配分は、正規分布に従う相対評価。

 生徒との橋渡し役として授業の補助をする大学院生のTA(Teaching Assistant)がついてくれる。授業での出席確認や生徒への各種連絡、資料のコピー、オーディオ機器の不調などへの対応、臨時的に使う教室の確保などを依頼した。優秀なTAがついてくれると心強い。

 中間・期末試験は、通常の時間割とは別に、スケジュール委員会から時間割と教室が割り当てられる。事前に試験時間やオーディオ機器の要否などを連絡しておく。試験問題はあらかじめ教務担当(Ms. Priti Patel)に送り、試験会場に必要部数を用意しておいてもらう。

試験は、担当教師以外に、試験監督の教員や補助の大学院生らが加わった態勢で実施する。カンニングを警戒し、スマホは持ち込み禁止。試験会場となる講義棟の入り口で荷物チェックが行われる。

監督官は、少しでも疑わしい行為をした生徒は退出させたり、早く回答を終えた生徒が退出したときは生徒を別の席に移らせて生徒同士の間隔を広げたりしていた。その一方、試験中には監督官らのティータイムがあり、一斉にチャイとサモサなどでなごみ、あまり見回りをしていない隙もあった(笑)。

【宿舎】

 ビジターズホステルの一室が借りられた。ホステルは一部4階建ての建物で、その3階の2室ある部屋。冷房完備。暖房は、12月から1月にかけて朝晩など冷えるので電気ストーブを買った。部屋に残しておく。

 キッチン・流しがあり、自炊する場合、ガスコンロ、鍋、フライパン、皿、フライ返し、お玉など最低限のものは借りられる。ガスはプロパンガス。なくなったら900円くらいで交換してくれる。

 トイレは洋式の水洗で、トイレットペーパーも流せる。シャワーはついているが、水しか出ないので使わなかった。お湯と水の蛇口を調整し、大きなバケツにためて温水を使った。

 部屋はときどきスタッフが掃除に入ってくれる。ベッドのシーツ、枕カバー、タオルはその際に交換してくれる。洗濯機はビジターズホステル本館2階にある。洗濯物は自室のベランダに干した。

 Wi-Fi完備。ただし、よく途絶えて不安定。停電もしょっちゅう起きる。ときどき断水もする。ただし、いずれもたいていは数時間で回復する。一度、何日もWi-Fiがつながらず、携帯からのデザリングもできないときがあり、このときは図書館に行ったら通信ができた。

 宿舎でのあれこれについては、ホステル事務室のVivekがよく面倒をみてくれる。

 本館1階に食堂がある。朝食(8:30~)100ルピー、昼食(13:00~)150ルピー、夕食(20:30~)150ルピー。急に行ってもたいてい食べられるが、予約帳に記入しておくとよい。毎月初めに前月分の飲食代をVivekが伝えてくるので清算する。キャンパス内の他の食堂の方が安いが、そちらはかなり辛い感じ。学生寮にノンベジの食堂があるそうだが、それ以外は、ビジターズホステルの食堂を含めてすべてベジタリアン料理。

 飲料水は、当初はミネラルウォーターを買っていたが、ほどなく宿舎や大学の各所にある水タンクから給水するようにして自分は問題なかった。

 宿舎から坂を下りたところにアムール・ショップと呼ばれる小さな売店があり、お菓子や飲料などはここで買える。また、学生寮が建ち並ぶ方面へ徒歩20分ほどのところに、いくつかの売店や食堂がまとまった一角があり、日用品、事務用品、野菜・果物、食品などが買える。肉類はないが、取り寄せができるらしい。酒類はない。

【その他】

 給与振り込みのための銀行口座の開設手続きには、すぐに着手してくれるが、2、3週間かかった。アプリの設定を含め、諸手続きはキャンパス内のIndian Bankの支店で手助けしてもらった。

 キャンパス内での購買をはじめ、インド国内のあらゆる支払いでUPIが使われている。口座が開設され、ローカル電話や銀行アプリが使えるようになればUPIで一気に生活が便利になる。

 電話・通信には大学がSIMカードを貸与してくれた。無制限、無料。

 街なかまでは大学のバスで30分ほど。車内でスタッフに片道20ルピーを払う。午後3時から何便か出ており、大学のサイトに時刻表が載っている。女子寮前が出発点だが、正門でも乗れる。混んでいても、スタッフが生徒を押しのけて教員を座らせる。帰りは、「アムールショップの前で降ろして」などと頼めば、遠回りしてホステルの近くで降ろしてくれる。オートリキシャだと、街なかから250~300ルピー。

 空港へはタクシーで600ルピー。空港から戻るのもプリペイドタクシーで同額。正門前でオートを拾ってもいい。オートはなら250~300ルピー。Uberは、ホステル発ではタクシーもオートもほぼつかまらない。空港と街なかを結ぶ路線バスもあり、大学前で乗り降りできるが、200ルピーくらいするし一度しか乗らなかった。

 宿舎の近くにPrimary Health Centreがあり、ほとんどの診療科がある。自分は受診していないが、何か健康上の問題が生じたときには相談できる。

【苦労した点】

 インド社会全般に言えることだろうが、何かにつけ時間がかかるし、あらかじめ準備しようと先走っても前日くらいにならないと物事は動かない。

 授業や試験の時間割ができるのは、前週の金曜日の夕方、といった具合。しかも、自分はなぜか教員のメーリングリストに入っていないので、いつも生徒やTAからスケジュールを知らされる。さんざん文句を言ったが、あまり改善されなかった。

 部屋の生き物対策。ネズミがいるので、食料は出しっぱなしにしないこと。出入りしそうな場所はふさいだが、食料品は冷蔵庫やスーツケースに保管するようにした。部屋の各所にガムテープが張られているのは、ネズミのほかヤモリやアリが入ってくるのをふさいだ跡。