イエレニア・グーラ便り 6
この町で、教え始めてもう5か月半です。これまで19回レッスンをしました。「まるごと」の9課まですすみ、6月の末には、教科書の入門A1の最終課まで行けそうです。
学生数は3月末で、9名です。みんな頑張って続けています。シニアのクラスの3人は欠席が続き、消滅寸前です。一人は日本旅行に行く予定で忙しいのか休んでいます。もう一人は海外旅行でずっと休んでいました。みんなそれぞれ、出たりでなかったりするので、それぞれの進度が違い、教えるのが大変です。
18日の夜、学生から、日本映画に招待されました。イエレニア・グーラ文化センターで、新作映画の「悪は存在しない」という映画を見ました。教え子の人達も、誘い合って来ていました。後日レッスンの時、学生から、映画について、いろいろ質問されました。なぜあのような悲劇的な結末なのかわからなかったそうです。「先生は日本人だから理解できるのでしょう。何故ですか?」と、聞かれました。「私もなぜかよくわからなかったですよ。」と正直に返事しました。不消化な後味の終わり方でしたから。
3月に入って、それまで体調不良で延期していた、漫画のプレゼンテーションをしに、市内の学校に行きました。高校生のクラス(約50人)、中学生のクラス(約30人)と、それに教育向上財団の依頼でウクライナから避難しているティーンエージャーのグループ(8人)に、漫画のプレゼンテーションを合計3回しました。高校も中学も英語のクラスだったので、ポーランド語の通訳はありませんでしたがウクライナの青少年には、ポーランド語の同時通訳がつきました。高校でプレゼンテーションをしたときは、シーンとしているので、もしかして面白くないのかなと内心不安に思いましたが、終わったとたん、すごく大きな拍手をしてくれたので、びっくりし、とてもうれしくなりました。学生たちが私のところに来て、「大変面白かったですよ。」と言ってくれました。そして、昨日また、大学のマグダさんを通してザメチェク文化センターというところで、漫画プレゼンテーションをしてほしいと頼まれました。この漫画プレゼンテーションで、日本語に興味を持つ学生が増えて、来年日本語学習者が増えるといいですね。
3月12日は、教育向上財団のシニア(約60人)のために、「生きがい」に関するプレゼンテーションを市立図書館の講堂でしました。大学のリタイア英語教師のタチアナさんに英文原稿を渡してポーランド語にしてもらい、当日センター長のヨラさんが、通訳しました。プレゼンテーションでは、「生きがい」という言葉の起源とか、「生きがい」という言葉が初めて記録されている太平記を紹介したり、黒澤明の映画「いきる」の一部を入れたり(英語の字幕つきでとても役に立ちました)、「生きがい」が認知症の進行を遅くさせるというデータのグラフや、日本のシニアのそれぞれ異なる生きがいを紹介(夫や友人を動員しました)最後に「自分の生きがいは今ここにいて、異なる文化の人たちと交流して、世界を知ることです。」で締めくくりました。予定通り、45分間で終わりました。終わってホッとしていたら聞きに来ていた人達に、「役に立った」とか、「非常に興味深かった」という感想をもらいました。心臓病を患っているという年配の女性が私のところに来て、「ずっと心臓の事を心配して暮らしてきたので、あなたの話を聞いて、勇気が出ました。ありがとう。」と言いました。私は、その人の言葉で、「ああ、頑張ってプレゼンテーションを作って良かった。」とつくづく感じました。
「生きがい」プレゼンテーションを私に依頼してきた教育向上財団から、今月25,26日の二日間新たに日本文化イベントを企画したので、再び協力してほしいと頼まれました。ジェロナ・グーラの小山先生も、折り紙のワークショップをすることになり、私は和紙人形のプレゼンテーションと、和紙人形の展示を考えています。近郊の村、ブコビエッツ在住の大和夫妻も日本の盆踊りの紹介でイベントに協力します。ポーランド人で日本旅行をした人のスピーチや、写真展も開催される予定です。面白くなりそうで、とても楽しみです。
そして、最近もう一つの財団第3ステージシニアアカデミーからも、「生きがい」に関するプレゼンテーションを頼まれました。こちらの方は、4月28日に市のコンサートホールで開催します。
先週日曜日は、ポーランド語の先生イダさんが主宰している、ポーランド・ウクライナ交流ウオーキングクラブの、ピクニックに参加しました。ブコビエッツの大和さんの奥さんイデッタさんのガイドで、ブコビエッツにある大きな国立公園を歩きました。一行は合計18人で子供達も2名参加しました。結構急な坂もあって、大変でしたが、新鮮な山の空気を吸って、春のポーランドの山を楽しみました。イダさんのサンドイッチをごちそうになったり、ウクライナ人の年配の女性の、おいしい自家製ケーキをごちそうになったり、天気も良く、素晴らしい休日でした。みんなで昼食を丘の上で食べた後、大和さん宅に寄って、玄米茶のティ―タイムを過ごしました。大和さんが、炭坑節を皆に教えて、ポーランド人ウクライナ人日本人みんなで一緒に踊りました。大和さんのところに行く途中、村の庭付きの家を見て、ウクライナの人が、かつて住んでいた家を思い出したそうですよと、後でイダさんから聞きました。この時ほど戦争の悲惨さを感じたことはありませんでした。一緒にピクニックに参加していたウクライナの老人が「これは何の花ですか?」と花盛りのこぶしの木を指さして尋ねるので、「こぶしですよ。」と教えてあげました。「ああ、やっぱり。私の国にもありますよ。きれいですね。」と、懐かしそうでした。自分がこの人の立場だったらどんなにつらいだろうと思いました。 今月は、盛りだくさんの出来事がありました。以上今月の報告です。
