基本情報

ウッジ工科大学の総括です。

ウッジ工科大学の日本語クラスは国際工学部の建物で開講しており、すべての授業が試験なし単位なしのオプションクラスです。対象者に制限はなく、国際工学部の生徒以外にも建築学部や生物学部など幅広い生徒が参加していますが、大多数はITを学習しています。それゆえ生徒たちのほとんどはテクノロジーに強い興味を持っており、授業中に取り上げるIT関連の話はよく質問をしてきます。また、卒業した後にやってくる熱心な生徒もおり、日本語の普及に大きな手助けをしてくれています。広く門を開き、生徒と教師が意見を出し合って自由に学習する環境を作れることが日本語クラスの良い点だと言えます。

 

 

詳細

すべての授業は夕方から開講していて、90分授業です。後期は7コマで進行し、すべてのクラスが堅実にプログラムを終えました。以下は今年度のクラスです。

  1. Zero(初級レベル、学習歴なしの1年目クラス)
  2. Zero on Friday(上記Zeroの追加クラスで週二回学習したい生徒向け)
  3. Zero Plus(初級レベル、学習歴1年を過ぎた2年目クラス)
  4. Kiichigo(初中級レベル、学習歴2年を過ぎた3年目クラス)
  5. Decopon(中級レベル、4年目クラス)
  6. Sumomo(中上級レベルだが事実上の上位クラス、学習歴5年以上)
  7. Grammar(文法学習クラスで中級以上対象だが、事実上のJLPT対策クラス)

上記の1.Zero、4.Kiichigo、5.Decopon、6.Sumomoの名称はウッジ工科大学に伝統的に使われているクラス名称です。その他の名称は必要に応じて命名します。また、上記以外にも8.Sumomo(上級レベル)もありますが、今年度は開講していません。どのようなプログラムを提供するかはすべて教師の裁量であり、生徒の意見を踏まえて毎年決定します。

 

進捗について:

教科書は「げんき」を主軸としてプログラムを準備しましたが、こちらも生徒の意見を踏まえる必要があります。今年度は1.Zero、3.Zero Plusは「げんき」を堅実に進行して、4.Kiichigoのみ前年度を踏襲して「みんなの日本語」、その他クラスは生教材です。その他のクラスでも教科書をなぞる必要があるレベルもありますが、会話を楽しみたいなど、さまざまな意見を踏まえた結果です。

週一回の勉強では学習が進まないということもあり、2年目、3年目と進んでも思ったより教科書が進まないのがこの大学の特徴でもあります。この点に関しては生徒たちと教師の共通の悩みとなりますが、それでも1歩1歩着実に学習して前に進む生徒たちの学習意欲は賞賛すべきところでしょう。

今年度の授業レベルは、以下の通りとなりました。

1.Zero げんき3課まで(例年通り)

2.Zero on Friday 教科書なし、文法げんき6課相応まで(今年度限定クラス)

3.Zero Plus げんき7課まで(例年よりやや遅い)

4.Kiichigo みんなの日本語21課まで(例年より遅い、従来が早すぎる)

5.Decopon 教科書なし、文法みんなの日本語36課相応まで(例年通り)

6.Sumomo 教科書なし、文法みんなの日本語50課相応まで(例年通りだが開始レベルが高い)

7.Grammar 教科書なし、文法JLPT N2~N4レベル(今年度限定クラス、)

来年度の授業プランは今年度の授業結果と理想的な授業数、現実的なクラス提供数と生徒の意見などを総合的に取り入れて作成することになります。

 

生徒数について:

また、生徒数は1.Zeroのみ初回40名程度の大所帯となり、他クラスは10~15名で開始され、すべてのクラスで生徒数が徐々に減っていき、最終的には数名が残ります。工科大学の日本語クラスはオプションクラスであり、生徒の生活の中で優先度を上げられないことから、仕事は試験などの他の要因で参加者を断念することに関しては教師にとっても学習者にとっても悩みの尽きないところですが、学習歴の長い生徒曰く、「毎年最初にやる気を出して、脱落してまたやる気を出してまた脱落、を繰り返す」とのことです。それゆえ、初回に来て脱落した生徒が2学期に再度やってくる、ということもあります。このあたりの特性は、来年度も続くことが想定されます。

 

授業について補足:

上記のように生徒が出入りしたり途中参加したりすることがあるため、ウッジ工科大学の日本語クラスはおおむね90分の授業で1つの内容が完結するように設計しています。授業は本来、線のようにつながりがあった方が学習効果も高いとされており、教科書もその方針のはずですが、ここではそういう原則は通用しません。やってくる生徒のモチベーションにいかにして都度答えるかがより重要になってきます。

 

スケジュールについて:

今年度は10/1-2/10が1学期、3/4-7/9が2学期です。試験の週や冬休みが入りますので、日本語のクラスはそれぞれ15週、17週の提供となりました。厳密な規定はないらしく、毎年大学のスケジュールに合わせて計画を立てて進めていくことになります。参考程度に今年度のスケジュールを下記に記載します。

10月:オリエンテーション、授業開始

企業カンファレンス2日間 授業休み

11月:日本でいうお盆休み3日間、大学休み

Erasmusウィーク(授業は継続)

12月:JLPT

クリスマスから年始まで休み

1月:3日から授業再開、最終週より試験期間(授業は前週までに1学期終了)

2月:冬休みと試験、追試期間(授業なし)

3月:2学期開始

4月:企業カンファレンス2日間 授業休み

Erasmusウィーク(授業は継続)

イースター 大学休み

5月:日本でいう勤労感謝の日など連休 3日間大学休み

6月:祝日に合わせた休み 2日間大学休み

最終週に日本語のクラス終了

7月:JLPT

大学試験期間

夏休み

8月:夏休み

9月:夏休み

追試期間

上記は今年度の例ですが、来年度のスケジュールを入手後に頭の片隅に入れておくと、生徒との会話で内容齟齬が起きなくてよいでしょう。

 

日本文化紹介について:

授業中に日本語の学習をしながら紹介します。おもちゃの実物や日本でよく使われていてポーランドに存在しないものを紹介するとよいでしょう。例を挙げると、けん玉やかるた、将棋などは実物を見せて、自動改札や電車のホームドアは動画で紹介しました。テクノロジーも日本独特のものは日本のものとして扱うとよいでしょう。国際工学部ということもあり、古き良き日本文化と同じくらい興味を持っています。また、日本の流行やビジネス習慣、日本人がよく使うWebサイトや伝統行事なども紹介しています。今年は平成最後、令和元年のため暦への注目度が高く、質問が多かったためこれも紹介しました。イベントとして行ったのは2回で、どちらも書道です。書道の基本的な知識解説から実施までを大人数相手の行うことは大変ですが、来年度も実施できるとよいでしょう。

 

 

以上。