対面授業(90分)で行っていた内容を、そのままオンライン授業に移行するのでは、当然学生の集中力がもたない。そこで、オンライン授業開始後は学生達の意向を汲みつつ、試行錯誤しながら授業内容の立て直しを図った。3クラス/週2回の通常クラスに、JLPT3クラス(N5/N4/N2)、作文(ディクトグロス)クラスを加えてスタートした。後期試験の評価は、前期試験の総括的評価から形成的評価に変更し、自己評価を前期と同様に加えた。形成的評価は、①Summary(6課から10課)②5つの型+な形容詞・い形容詞・名詞の4つの型チャートの完成③オーラルテストである。①はSummaryのモデルを示し、学生自身で内容を工夫するよう指示した。②は後期授業の柱として進めてきた内容のまとめである。③は〇×による回答ではなく、5つの質疑応答を踏まえて自身の考えを導く運用力を試みた。

 私は5月半ばに帰国し、帰国後もポーランド時間に合わせてオンライン授業を1か月継続した。修了直後、日本人学生らを交え3クラス合同によるオンライン交流会を行い、再会を喜び合った。

・初級クラス/初中級クラス
 どちらのクラスも11課まで学習を終えた。最終的に2クラスの「理解力」「運用力」は差が開かず、進度は同じとなった。辞書形・ない形・た形の習得により日記の作成が可能となり、writingの活動の中心とした。前期に比べて学習者同士の会話もinformalspeechのスタイルが自然に定着していった。新たな活動として、学生達が自ら選んだ短いアニメ動画を紹介し合ったり、私は「Japardy」のクイズテンプレートを作成した。5つのカテゴリーの中に、既習文法や語彙、日本文化の内容等を盛り込み、日本語能力に関係なく、逆転の可能性を楽しめるゲーム感覚が彼らを熱くしたようだった。また、帰国後は新聞の4コマ漫画をスキャンし、会話部分を埋めながら笑いのツボを共有した。最後の半月はテキストを離れ、JLPT N5の模擬試験2回分を試みた。学生達は「語彙・文字」「文法・読解」「リスニング」のパートごとに、自身の得意・不得意に気づけたようだった。

・中上級クラス
 前期セメスター同様に、作成したJLPTN3(117)とN2(131)の文型リストを基に学生自身が適切な文を作り、発表しながら進めた。同時に頻出動詞と用法別助詞の表を完成させた。後半は読解やリスニング練習、2つの細かな文型の差異(例:「Aになる」「Aくなる」の違い等)を集めて考える時間に費やした。学生の意向で、オノマトペや敬語、ことわざ、四字熟語も導入し、前期後期を通してテキストは使用しなかった。

 大学の試験期間に入ると、学生達は「忙しい」と言いながらも日本語クラスに参加し、スピーチコンテストの準備や新聞社(日本)に投稿する作文の推敲に意欲的に取り組む学生達もいた。対面授業からオンライン授業に変わっても、出席者の数が減ることはなかった。卒業生の中には仕事を失った人、逆にアルバイトをしなければならなくなった人、ストレスで体調を崩した人、卒論と日本語学習の両立を成し遂げた人・・・。コロナウィルスの壁、ことばの壁、心の壁を自分の力でひとつずつ取り除いてきた全ての学生を心から誇りに思う。最後の授業では、修了書にメッセージを入れて渡したが、逆に学生達からも温かいメッセージをもらい、大切な宝物となった。
 授業を終えた今、学生一人ひとりにとり、ことばの習得はゴールではなく、ことばを学ぶ過程を楽しみ、共有し、そして彼らの「生」にも繋がっていることを実感した。教師は、学ぶ学生がいなければ無力な存在である。学生の学習環境が動的であることを自覚し、一層意識を更新していく必要があると痛感した。